KoumutenJob!体験記

工務店を訪ねて取り組みを「聞く、見る、感じ取る」。|京都大学大学院 地球環境学舎・西村実穂さん

所 属
京都大学大学院 地球環境学舎
出 身
滋賀県

大学で建築を学び、大学院で環境やコミュニティの研究に取り組む西村実穂さん。京都大学大学院の地球環境学舎に所属しながら、自身が興味を持った岡山県西粟倉村の企業の仕事にふれるため現地に3ヶ月滞在しながら研修に取組むなど、これからの地域やコミュニティに強い意欲と好奇心を持って研究している学生さんです。
東京都東村山市を拠点に木の家づくりをし、「建築や暮らしの周辺」にある家具や造園、まちづくり、地域の人との関わりなど、多様な活動をする相羽建設に関心を持ってインターンで訪ねてくださいました。研修の三日間を終えた西村さんに、工務店の取り組みにふれて感じたことをレポートしていただきました。
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自分自身が実際に聞く、見る、感じ取る。

工務店研修の利点は、自分の目で見る聞く、感じ取る、ことが出来る点である。また、自分の行動次第でその数を重ねられることである。多くの現場や仕事の様子を見せていただくことができ、社員の方々は自分一人ないしは小人数に対し、フラットに話してくださる。見学や模擬体験にとどまらず、打ち合わせやイベントに参加できることも多く、それらを通し、社内、社員さん同士の空気感を感じ取ることが出来る。

暮らしをつくる工務店の働く場を見直そうと2021年にリノベーションした事務所

建築家の伊礼智氏設計の「i-works」の空間。同氏との建築やまちづくりから相羽建設のものづくりが大きく変わってきた

”自分のための軸”を形成する。

価値観が近い人が集まって住む「ソーラータウン」のまちなみ

家具デザイナーの小泉誠氏と協働し、木と手仕事を活かした「大工の手」家具づくりも

自分の将来をある日突然具体的に考えなければならない、そんな風に感じる学生も多いと思う。自分にとって何が大切なのか、譲れないのか、分からない。私が大切だと思うのは、自分のための軸を形成することだ。
学校という、基本的に同じ年代の人としか交わってこなかった私たち学生が、実際社会で働く人のさまざまな話を聞くことに大きな意味がある。また、自分自身が経験することが大切である。社会生活の多くを学生として過ごす現学生に、働くことに対する自分の考えや軸がないことはむしろ当たり前であるが、「ないから仕方がない」と思うのではなく、経験を少しでも蓄積していくことが重要である。

 

未経験のことと、少しでも触れたことがあることでは雲泥の差がある。社会で働く人の経験値ももちろん様々だが、その人の経験値やスキルが100であろうと10であろうと、自分の経験値が0であれば、そのすごさや差はは決して分からない。しかし自分の経験値が1でも0.5でも存在するのであれば、自分の経験値を軸に比較することができる。それはスキルにとどまらず、働く環境や社内の雰囲気など全てに対して言えることである。何でも経験をすることで、”自分のための軸”をつくることが出来、自分だけの比較が出来るようになる。

工務店は全国の日本の諸地域に点在する。地元や学校の近くにもあるかもしれない。自らアポをとって体感するのも良いのではないか。何かを体験し感じただけで終わらず、なぜいいと思ったのかを、自分のために分析することをすすめたい。

 

”日本一せわしない工務店”相羽建設、建築を接点とする。

私の主な研修内容は、現場に行く、複数の部署の社員さんの話を伺う、工作イベントに参加する、ことであった。訪問する曜日や日程、工務店にもよるとは思うが、希望を聞いていただけた。


実際に現場にいくことで、現場での空気感、大工さんとの関係性が見える。長く務めている人、新卒で入社したばかりの人、設計、広報等他部署の人など、同じ企業に所属する方の異なる働き方や視点を聞くことが出来る。ひとつの企業を多角度から見ることが出来る。建築に元々関わってなかった方や、購入した家に惚れこんで働いている方もいらっしゃると伺った。地域の方とのイベントに参加することで、地域での役割や立ち位置、関係性を見ることが出来る。地域と共に働く工務店にとってはとても大切な観点である。

現場やお話から印象に残ったことは、とにかく取り組みが多岐にわたることだ。不動産事業も建設業もやってるからこそ出来ることや、ベンチ制作・ペンキ塗り・マルシェなどイベントによる地域との関り代を増やしていくことも大切にしている。

企業として大部分を占めているのは建築物をデザインして建設していくことだが、住宅に対する細やかなメンテナンスや公園の管理、イベントなどを継続的かつ経営という観点を大切にしているところを拝見し、建築が地域や人を繋ぐ手段・接点としても働いている、というイメージを持った。

モデルハウスがある拠点「つむじ」では定期的に地域の人とつながるイベントやマルシェが開催されている

木の屋台が多摩地域の複合施設でも多数使われている


「相羽建設」は主語ではなく、住まい手や地域の人たちの日々を彩る生活の一部になる。

「建築をつくる」というより、「暮らしをつくる」。


経験からは、得るものしかない。

最近では本就職でなくインターンや企業説明会にも選考があり、「ただ興味があり、知りたい」と思う気持ちに対しても選考が設けられてしまうことが少なくない。

一方、企画するインターン研修がなくとも、興味をもち自らアポをとる学生を拒む工務店はあまりないだろう。むしろ、歓迎してくれるところがほとんどである。工務店と一口にいっても、地域や働く人によって雰囲気は全く違い、建築や地域、デザインに対する価値観もこんなに違うのか、と実際に伺うと驚かされる。

工務店での研修に恐らくデメリットはない。お金や時間はもちろんかかるが、実際に経験することはそれら以上に価値があると感じる。また、交通費や宿を補償してくださるところや、給与として補助してくださるところもある。

自分が働く場所としてのメリット・デメリットはどこもあり、それは当然である。最も大切にすべきことは自分に合うかどうかであり、そこは自分が体感するしかない。



また、自分に最適な場所を見つけるためにはその経験を蓄積する他ない。最終的に働く場所が工務店でなくても、自分のための比較軸をもっておくことは必ず役に立つと思う。

(了)

工務店人財プロフィール

名  前 : 西村 実穂さん
所  属 : 京都大学大学院 地球環境学舎 環境マネジメント専攻(2022年4月時点)
出 身 地: 滋賀県