産学協働「工務店人財マッチングプロジェクト」立ち上げの経緯

大学関係者と建築事業者との情報交流の中で、2018年に発表をされた、2021年春入社以降の新卒者を対象とする就職・採用活動のルールを策定しない旨による、実質的な就職協定の廃止によって、結果として更なる大手優位な採用の傾向、新卒者の大手志向は強くなるのではないかと学校側、事業者側ともに懸念、危惧をいただくようになりました。

一方で建築事業社、中でもとくに地域工務店の仕事や役割は多様化をしてきており、社会性の高い魅力的な事業展開をされている工務店も多くなっているとの認識も併せて共有をしました。

とは言え、そう言った感覚や情報は工務店、学校、学生で共有されているとは言えず、採用においても、情報においてもミスマッチが起きているとの現状を共有しました。

本プロジェクトの趣旨

工務店、学校、学生のミスマッチを解消するべく、「情報発信と共有」、「体験体感の創出と共有」、を目的としてwebによる情報発信、体験を共有すべくアルバイトや採用情報の共有を行うこととしました。

新卒社員や中途正社員の採用を目的とした既存メディア媒体はあるものの、正式社員採用は工務店、学生、学校にとってもハードルが高く、まずはお互いの接点ハードルを下げ、体験体感の場の提供をすることを目的として、できればアルバイト、時にはインターンシップを提供し機会のマッチングを本プロジェクトの主目的とすることに至りました。

建築学生へのメッセージ
町をかたちづくる工務店の仕事

全国で建築を学ぶ皆さん、こんにちは。いきなりですが、工務店を体験してみませんか。

皆さん、工務店にどのようなイメージを持っていますか。大工、それとも木造住宅をつくる会社、地域に密着した建設会社といったことを想像しているかもしれません。いずれも正しい工務店の特徴と言えますが、近年の工務店は少しずつ多様化しており、これまで見られなかった仕事や活動も生まれてきています。

工務店の業態はもともと大工工事を軸に木造住宅の設計・施工とメンテナンスでしたが、これらに加えて、例えば非木造や非住宅、公共の工事の請け負う事例も見られるようになっています。また、メンテナンスや職人などを共同化する者やデザインを売りにする者なども現れています。他方で、林業や製材などを行う、宅地や建物といった不動産の取引・管理するというように川上・川下両側への展開も見られており、工務店は地域の建物づくりの担い手としてその業域を垂直・水平に広げつつあります。

こうした建設活動に関連したことだけでなく、地域行事やコミュニティを盛り上げる場づくり、地域住民の暮らしを支援する事業などにも力を入れている者が出てきています。地域の構成員として顔の見えるエリアで仕事を担っているという姿勢や自負があるからこそ、工務店が個々にしっかりと町に寄り添い、さまざまな地域活動を展開しているのです。現在では町をかたちづくる多くのモノ・コトに関わっていると言っても過言ではないでしょう。

このように多様化が進みスタッフに求められる能力も変わりつつある工務店ですが、小さな会社らしく分業化の度合いが低く、ひとりが携わり手掛ける仕事の内容・範囲が広いことは変わっていません。収入を得ること以上に、充足感や手応えなどを得るという仕事観がより大切にされる時代に、地域・町の人々がかかえる大小さまざまなニーズの実現や困り事の解決にたっぷりと深く関われる工務店の仕事に対して、私たちはもっと注目すべきではないかと思います。

工務店は町の風景をつくる。そんな工務店、そこでの仕事や働く姿は、活き活きとして心を惹き付けます。建築を学ぶ皆さん、今から工務店の世界をじっくり味わってみませんか。

大学サイド 発起人|広島大学 角倉 英明

プロフィール

広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授/1977年東京生まれ/2008年東京大学大学院工学研究研究科博士課程修了/博士(工学)/国土技術政策総合研究所住宅研究部、建築研究所建築生産研究グループを経て、2016年より現職/専門:建築生産、建築構法/著書に「図表でわかる建築生産レファレンス」(共著)彰国社2017年など。

地域工務店で働くこと。その価値を伝えよう

働くことの「意味と目的と理由」が問われている時代と感じます。
地域工務店の『地域」は働くことの意味と目的と理由になり得ると考えます。地域に根ざした会社であり仕事であること、愛着を持つ地域であること、そして地域のために働くことは、まさに働くことの意味と目的と理由、そのものではないでしょうか。
併せて地域工務店の役割が多様化する中で、仕事の内容も多様化をしています。ものを建築すること、つくることだけが仕事ではなくなり、コミュニティに関わりよりよいコミュニティをデザインし、社会問題や地域課題に当事者として関わり解決することなども地域工務店の大きな仕事となっています。

一方で地域工務店に足りないものは「伝える」ことではないかと感じます。「いくら素晴らしいものをつくっても、伝えなければないのと同じ」であることをもう一度考え、受け止めなくてはなりません。地域や自社のリソース(資源)が乏しいことを嘆くのではなく、それは伝わっていないのであり、地域工務店が自信と信念を持って、自らの仕事や働く人たちを伝えることで豊かなリソースは集まってくるのだと考えます。

もうひとつ付け加えるなら、会社や仕事のあり方は大きく二極化してきていると感じます。ひとつは地域も企業も大規模、大資本への集約が進み、より効率や生産性が求める社会です。言い換えると今あるコトやモノをより上手に行おうとする姿です。もうひとつは、小資本の連携で新たなコトやモノを発見し、発明するような姿です。挑戦的で必ずしも効率的なことばかりではありませんが、それぞれが主体的であるような姿です。

会社も働き手も選択と、自らの明確な立ち位置を意識する必要があるのではないでしょうか。そのことが、どのような会社であり、地域であり、働き方をするかの指針となるのではないかと考えます。
地域工務店の生き方であり、働く人の活き方が、より多様になり、それぞれに輝く世の中となることを、そして本プロジェクトがそのことに寄与することを心より願います。

工務店サイド発起人|相羽建設株式会社 代表取締役 相羽健太郎


プロフィール

神奈川大学卒。一条工務店を経て1998年に相羽建設に入社。建築家の故・永田昌民氏や伊礼智氏、家具デザイナーの小泉誠氏との協働をはじめ、建築業界や行政、地域との価値観に基づくつながりの中で「創発」が生まれるプロジェクトを多数進めている。一般社団法人わざわ座理事。一般社団法人木造施設協議会代表理事。