足下の暮らしを変えれば世界が変わる
家づくりのあるべき姿を取り戻したい
「かつての日本の住まいは、地域ごとに異なる気候や環境と調和した、理想的な循環型の暮らしを形成していました。そんな家づくりのあるべき姿、〝自然〟な姿を取り戻したいんです」
建築工房 零の代表・小野幸助さんは、環境破壊やエネルギー問題への関心が強い。それは近年の住宅産業においてはトレンドである。しかし、小野さんがこうした問題意識を強く持っていたのは20年以上前からだという。
「大学時代、建築ではなくエネルギー工学を学んでいたんですよ」
その動機は「暮らし」に興味があったため。現代社会において暮らしとエネルギーが密接な関係にあるのは言うまでもない。そんな思いで選んだ学科だった。学んでいくうちに住宅そのものへの興味が勝るようになり、今の道へ。
「独立したのも自分の理想の住宅をつくってみたくなったから。ただ、この業界、そして社会を変えたいという思いもありました」
仕事を重ね、住宅や暮らしにまつわるさまざまな実情や問題をより目にすると、後者の気持ちが強くなり、現在の建築工房 零の社是「地球と暮らそう。」につながった。
中と外を分断するのではなく、外の自然とつながり、循環を形成するような家を。かつて自分が学んでいたエネルギーの知識も役立つ。もともとアウトドア好き。自然と親しむ乗馬やバイクといった趣味もリンクする。自らの家づくりの指針が固まっていく。
杜の都・仙台から、未来へ
その過程で地元の英雄である伊達政宗の偉大さも知った。
「仙台の愛称〝杜の都〟の『杜』の意味を知っていますか?」
自然の森ではなく、人間が手をかけ大切に育てた木々を意味する言葉だという。
「政宗が家臣たちに住宅用として与えた土地は約300坪。そこにクリの木、お茶などを植えなさいと指導したのです」
こうして形成された仙台中心部は、豊かな緑が広がる住宅街となり「杜の都」の呼び名がついた。
「直接的な理由は飢饉対策ということですが、私は街づくりという意識もあったと思います」
政宗という人物は、政治や軍事に優れる一方で料理、食事について細かな記録を残すなど、生活にも強い関心があったといわれる。
「政宗は海外にも目を向けるなど世界を見据えていた人。だからこそ足下の暮らしを大切にしたのではないでしょうか」
「おこがましいのは承知していますが」と小野さんは恐縮するが、そこに自身の考えと重なる点を感じるのだという。
「足下の暮らしを幸せにするには、社会や世界を見据えることも大切なことです。逆に、広い視点で社会を世界を見れば見るほど、足下の暮らしの重要度に気づくのではないでしょうか」
健やかな暮らし創造業
世界規模の環境破壊、浪費される化石燃料。その状況を変えるには、まず人々の暮らしを変えることが肝要。意識や暮らしが変われば、やがて世界も変わる。小野さんはそんな思いで家づくりに取り組んでいる。それもあって政宗も世界に通用する自分、国になるには、まず自身の足下の街と暮らしが世界に通用するようなものにならなければと考えたのではないか―。
「私は住宅会社というよりも、暮らし創造業という意識で家づくりをしています。暮らしを通して幸せな社会、世界をつくりたい。それをできるのが建築会社といっても過言ではないと思うんです。(出典:SUUMO)
建築事例
会社概要
会社名 株式会社建築工房零(ゼロ)
住 所 本社・焚人ショールーム/仙台市泉区南中山4-3-16
十符の杜住宅展示場モデルハウス/利府町利府八幡崎57-1
泉ヶ岳ゼロ村/仙台市泉区福岡字森下12-1
青森設計室/青森市栄町2-4-2-1階
連絡先 022-725-2261(代表) E-mail z@zerocraft.com
URL https://www.zerocraft.com