森と海をつなぎ、街に森をつくる。
自然に寄り添う暮らしを都市の住まい手≈さんへ届ける仕事
東海地方の中心地、愛知県名古屋市に、岐阜の木をふんだんに使ったあたたかい家が出来上がる。その家を手掛けたのは「ひだまりほーむ」。その名の通り、家族だんらんで過ごすあたたかな空間があり、自然と共生する心豊かな暮らしをつくる会社だ。
岐阜県岐阜市に構える同社の家づくりは「森を守りたい」の一心ではじまったという。1928年に岐阜県郡上にて製材業として創業して以来90年以上経つが、住宅事業を始めたのは20年ほど前のこと。高度経済成長期以後、日本で使われる木材のほとんどが外国産材になる一方で、使われずに放置され荒れてゆく地元の森。手入れがされなければ森は荒廃してしまう。大工や工務店に岐阜の木や日本の木を使おうと呼びかけてもまったく話を聞いてくれず。ならば自分たちで岐阜の木を使った家づくりをしようと立ち上がったのがひだまりほーむだ。20年間一貫して、国産材のみを使い続ける姿勢は変わらない。
岐阜の地に根づき、知名度を獲得しつつあった頃、5年前に名古屋への進出を決めた。岐阜から名古屋へ、川上から川下へ木づかいの文化をつなぎたい、自然素材の作り手と住まい手をつなぎたいという想いだった。そこで出会ったのは、故郷の空気や生まれ育った木の家の環境を求めている人々たち。想いは合致した。
いま完成しようとしている住まいも、まさに岐阜の作り手と名古屋の住まい手をつなぎ、名古屋の街に森をつくる住まいだ。100%国産材と自然素材で作られた空間は森の中にいるかのような心地よさ。エネルギー消費にも配慮され、太陽熱や風を上手に取り込んで小さなエネルギーで暮らすことができる。そんな自然と寄り添う暮らしの在り方が、名古屋の都市でも実現できるのだ。
今回の住まいを担当した営業スタッフは、新卒3年目の高橋くん。同社のある岐阜市出身で、高校生時代には甲子園に行くほどの熱い男だ。彼の就職活動はちょっと異色。地元岐阜は大好きだけど、地域のために働く前にまずは東京の企業で下積みをしたいと考えていたのだ。そんな彼を変えたのが、この会社との出会い。「岐阜を元気にしたい」の想いは、新卒から叶えられる。そして、東京に出なくても地元に魅力的な企業があり、活き活き働くことができると示したかったという。
奇しくも、彼の最初の配属先は岐阜ではなく名古屋営業部。岐阜の木を使うことは、岐阜のためでもあり、日本のためになる。地域を想う気持ちは、名古屋のお客様にもしっかり伝わった。
そんな想いに共感して家づくりを始めた今回の住まい手さん。住まい手さんと高橋くんの想いを同社のエース女性設計士竹中さんが形にする。住まいづくりのテーマは「段×談でつながる住まい」。スキップフロアや小上がりによってゆるやかな家族のつながりをつくり、心躍るワクワク感を演出する。丁寧に対話を重ねてつくられた住まいは、住まい手さんの暮らし方にぴったりと合う。同社では、住まい手さんの暮らしにあわせた住まいづくりのために、対話を何よりも大切にしている。
8月の竣工に向けて、現場では腕利きの職人たちが丁寧につくっている。完成した暁には、これから家づくりをする方々へお披露目する。こんな住まいづくりの在り方があることを、都市の方に伝える絶好の機会。そして次なる住まい手さんとの初めての対話の場。
そんな機会に触れられる1日職場体験に、ぜひのぞいてみてはどうだろうか。