全国で建築を学ぶ皆さん、こんにちは。いきなりですが、工務店を体験してみませんか。
皆さん、工務店にどのようなイメージを持っていますか。大工、それとも木造住宅をつくる会社、地域に密着した建設会社といったことを想像しているかもしれません。いずれも正しい工務店の特徴と言えますが、近年の工務店は少しずつ多様化しており、これまで見られなかった仕事や活動も生まれてきています。
工務店の業態はもともと大工工事を軸に木造住宅の設計・施工とメンテナンスでしたが、これらに加えて、例えば非木造や非住宅、公共の工事の請け負う事例も見られるようになっています。また、メンテナンスや職人などを共同化する者やデザインを売りにする者なども現れています。他方で、林業や製材などを行う、宅地や建物といった不動産の取引・管理するというように川上・川下両側への展開も見られており、工務店は地域の建物づくりの担い手としてその業域を垂直・水平に広げつつあります。
こうした建設活動に関連したことだけでなく、地域行事やコミュニティを盛り上げる場づくり、地域住民の暮らしを支援する事業などにも力を入れている者が出てきています。地域の構成員として顔の見えるエリアで仕事を担っているという姿勢や自負があるからこそ、工務店が個々にしっかりと町に寄り添い、さまざまな地域活動を展開しているのです。現在では町をかたちづくる多くのモノ・コトに関わっていると言っても過言ではないでしょう。
このように多様化が進みスタッフに求められる能力も変わりつつある工務店ですが、小さな会社らしく分業化の度合いが低く、ひとりが携わり手掛ける仕事の内容・範囲が広いことは変わっていません。収入を得ること以上に、充足感や手応えなどを得るという仕事観がより大切にされる時代に、地域・町の人々がかかえる大小さまざまなニーズの実現や困り事の解決にたっぷりと深く関われる工務店の仕事に対して、私たちはもっと注目すべきではないかと思います。
工務店は町の風景をつくる。そんな工務店、そこでの仕事や働く姿は、活き活きとして心を惹き付けます。建築を学ぶ皆さん、今から工務店の世界をじっくり味わってみませんか。
大学サイド 発起人|広島大学 角倉 英明
プロフィール
広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授/1977年東京生まれ/2008年東京大学大学院工学研究研究科博士課程修了/博士(工学)/国土技術政策総合研究所住宅研究部、建築研究所建築生産研究グループを経て、2016年より現職/専門:建築生産、建築構法/著書に「図表でわかる建築生産レファレンス」(共著)彰国社2017年など。